私が小説を書くとしたらば

大阪で、Y田に会った。Y田は変わらずにY田であって、優しく、賢明で、私の親友だった。

Y田は帰り際に「かほに小説を書いてほしい。」と言った。内心、まぁまぁえげつないエネルギー使わなできへんことを「そこの醤油とってほしい」ぐらいの省エネな風合いで言うてくるやん、と思ったが、

「ショートショートぐらいならいけるかな」

という変な返しをして丸く収めた。

群馬に戻り、Y田と話したことなどを反芻しながら忙しく日々を送っていると、一週間経った今日、吉d…Y田が私と会った日のことをブログに書いてくれているのに気がついた。

そこには、再び「小説を書いてほしい」と私に伝えたくだりが書いてあった。しかも、彼はそれを伝えたいあまり、わざわざ私の帰宅に付き合い電車に乗ったというのだ。

私の中に(けっこう本気やったんか)という驚きと(ジャルジャルのDVD忘れてごめん)という申し訳なさがしばらく交互に訪れた。

親指で「いいね」を示すハートを押そうかとも思ったが、彼がこうして私と過ごす時間を大切に思い、それを形にしてくれていることに比べると、それはあまりに些細で意味のないことのように思えた。

かといって、それではリクエストに応えて小説を書こう、というわけにもいかない。なんの構想もなければ、技術も、モチベーションもない。いやY田のおかげで多少のモチベーションはある。ただ私は一時の爆発的なモチベーションだけで作られたものが、大抵次の日にはとても直視できない代物に仕立て上がることを知っている。

というわけで、とりあえず、今日のところは「私が小説を書くとしたらば」という名目で、Y田のために自分を見つめてみようと思う。誰かのために自分を見つめるというのはなかなか不思議な経験である。



まず、始めに私はSF映画が観られない。
と、言い切るのはあまりに早すぎることはわかっている。世の中には私が号泣しながら最後まで観た上に、その足でその続編をレンタルしに行くようなSF映画もきっとあるだろう。

しかし、どうにも、宇宙規模で描かれるあらすじを読むと、サーっと興味が引いてしまうのである。私にとって小説や映画は「自分がより良く生きるための肥やし」であるため、自分となんの関連もなさそうな、というか誰とも関連などないであろう空想ものには、どうしても手が伸びない。

また、私は1つの物語を描く上で、必要な演出として登場する人物を見ると

(主人公を引き立てるために、この人物は利用されている)

と感じる。

それが悪意に満ち、勧善懲悪に従った感性で言えば、鉄槌をくださざるを得ない人物であればあるほど、この人物はねじ曲げられた存在である、と感じ、物語の先を知ることが億劫になってくる。

リリーフランキーが何かの映画の宣伝で話していたことが思い出される。

「世の中から見て、とんでもない犯罪を犯した悪人でも、24時間、いつでもどこから見ても悪人ってことはないだろうと思う。人を殺しに行く、その直前に立ち寄ったコンビニで、募金をしているっていうことだってあるかもしれない。」

というようなことを言っていた。私が、もし小説を書くとしたらば、悪人とされるその人が、募金をしている姿をちゃんと描きたい。

人間は愚かだが、愚かに徹することも難しく、どんな悪意に食い潰された人間の中にもきっと、美しさを求める一筋の光のようなものがある。

その逆もしかりで、人間に完璧な美しさというものはなく、誰もが未完成で、くだらなく、滑稽で、そういう姿を含めて人が人を受け入れることを「愛」として描きたい。

えらい抽象的な話になってきた。

今気づいたがリリーフランキーが宣伝で話していた「何かの映画」って絶対「凶悪」やん。話の内容で覚えとこう、それは。

あと、筆がのってきた感じでバァ~と書いた上の文章、「愛」のところ「愛知県」て誤変換で打ってもおてるのに後から気づいて、


人が人を受け入れることを「愛知県」として描きたい。


ていう愛知県民もびっくりのクレイジーな内容になってて危ないところやった。

こういうのが、好きなんだよ、私は、吉田。

今のところ一番私と感覚が近しい作品を作ってくれるのが、沖田修一監督で、

沖田監督は誰もが感動するようなオーロラよりも、みんなでラーメンを啜ることを選んだ人間の切実さを描いてくれた。

高いプライドや強すぎる自己愛から、甘いものを食べないと頑なになっていた青年が、口にあんこを押し込まれて「…美味い。」と呟く素直さを描いてくれた。

私はそれを見て、自分が許されていると思えたし、この映画の中の人たちが尊く、愛おしかった。

まずやっぱり笑いはないより、あった方がいい。人間はなるべくたくさん、長い時間笑っている方が幸せだ。

そして、小さな変化を見逃さないような、人間の生活を丁寧に描けるといい。

そして、その人物なりに、何か勇気をもってアクションを起こす場面が描ければ、それでいいかな。

ざっっっっっくり!だよ、吉田。
もう吉田言うてもうてるやん。
Y田と打ち直す気力もない。それが人間だ。

早く会いたいね。



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