心象の日記

よく、ドミナントからトニックに和音が解決する時に、なんか、アホみたいやな、と思っていた。ドミソて。ドミソて、なんかアホみたいで、恥ずかしい。
映画のラストで理屈抜きに、愛の力が全ての問題を解決してしまうとガッカリするし、通販番組でもれなく全員が「えぇ〜!」と驚くと恥ずかしくなる。

いわゆる「お約束」「ベタ」「王道」といったものに拒否反応が現れてしまうようで。
いつも私はトニックの和音に7番目の音を足す。少し複雑で浮遊感のある響きに安堵する。

だけど、だけどな、「単純でベタなものが嫌だから少し小細工を施してど真ん中を外す」ということを毎回やっているのなら、それも、ベタなものと同等に単純で、必然性を欠いたつまらないものじゃないのか。

私は自分の作るものを、そんな風に否定したくなることがある。
ど真ん中を存分に意識しながら、それを外すことに注力している。たったそれだけの心持ちで、一体何を成そうというのか。

それでも、作ることへの意欲は消えないもので。
つまらない。実につまらない、と思いながら、言葉を、音を、捏ねくり回している。

「なんこれ、おもんな。」と、辛辣な言葉しか持たない乖離した私を引き連れて、私はまた、君に会いたくなる。
会いに行く。

「あれ、ほんまよかったで。」
君は言う。それは君が優しい、ということを証明するだけの言葉だ。

「本気じゃなかったらわざわざ感想なんか送らんやん。」
そこをわざわざ感想を送ってくれるような人だから、君のことが好きなんだ。

乖離した辛辣な言葉しか持たない私は、頬を赤らめて黙っている。嬉しいんかい。なんだかんだ言うて、あんだけグダグダ言うといて、しっかり喜んどんのかい。

どちらの私の方が辛辣なのか、分からなくなってきた。
ぬるま湯よりも、ほんの少し温かいお湯にとぷんと浸っているようだ。

もう十分に満足だ。
私は心からそう思う。
そしてまた、これで満足だなんて思うから、お前は駄目なんだよ、と乖離した私が訴えてくる。

だけど君が、そんな私をすごいと言ってくれるもんだから、私はそれを信じて歩んでいかざるを得んのだ。

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