いつかの君が

妙に悲しい夜だ。
理由はよくわからない。

娘とのビデオ通話で必死に変顔を作る父の顔が紛れもなく歳をとっていて、あぁ、と思った。
娘が変顔を返すと父は破顔一笑し、その皺の深くなった顔を見ていると、ふいに泣きたくなった。

毎日、自分なりに頑張ってはいるのだけど、理想には程遠い自分の不甲斐なさも悲しい。

今の学級をまとめるためにはどうしても週の終わりには喉を枯らしてしまう。
歌えない。
歌いたいのに、全く思うように歌えなくて、
悲しい。悲しい。

画面から響く朗々とした声に嫉妬して、自分の喉に手を当てる。

自由になりたい。
音楽の勉強がしたい。
それならもっと自分でできることをやればいい。
でも、日々やらなければならないことをこなすだけで精一杯で、疲れ果ててしまってできないんだよ、というのも言い訳に過ぎないと分かっていて、結局は自分の弱さを常々突きつけられて、苦しい。

隣で眠る娘にもいつかこんな悲しい思いを抱えて眠る日がくるのだろう。

「だれでもできることはできてもすごくないんですか?」

そんなことはないよ。
毎日きちんと起きてご飯を食べて、仕事に行く。
そんな自分はえらいと思う。
娘が劣等感に苛まれている時は、あなたが生きているだけでこんなにも私は幸せなのだと言ってあげたい。


だけど、そうなんだけど、
やっぱり悲しいんだ。

やりたいことがやりたいだけできない。
それが悲しい。
やれるだけのことをやった自分に出会いたいのに、到底出会えそうにない。
それが悲しいんだ。

歌を作ろう。
ゆっくりでも。
どこかで歌って、人に聴いてもらいたいなぁ。
無力であっても、思うようにいかなくても、そういう自分だから作れる歌があるかもしれない。
こんな自分だから、解る気持ちがあるかもしれない。
苦しむことを諦めなかった自分だから、本気で笑えることもある、かもしれない。

今日は悲しい夜だったけど、そんな時間を過ごしたからこそ、明日の景色が美しく感じられるのかもしれない。よね。

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