電話

私は心臓が止まりそうなくらい緊張していたあの時も

自分が世界で一番駄目なやつに思えた時も

長く好きだった人と離れた時も

孤独に震えて寝たことはない。

いつも彼女に電話をかけたから。


彼女は私の緊張を宇宙と秤にかけて、なかったことにしたし

世界一駄目な私が言うことに一つ一つ笑ってくれたし

どれほど私に非があろうと、私の味方でいる甘さを隠そうとしなかった。


一年、一年と、私の心は強くなったか、堅くなったか、大きく揺れ動くことがなくなり、

彼女に電話をかけることは少なくなった。


私の中に大きな恩だけが、刺さるように深く残っている。

あの時、彼女が電話に出てくれたから、私にとって世界はいつも、紙一重で優しいものとなった。

私がここにいる限り、彼女が孤独に震えて寝る夜がないようにしたい。







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かほ

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